受託者の任務は、信託の清算が結了した場合のほか、次に掲げる事由によって終了します。ただし、第三号に掲げる事由による場合にあっては、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによります。
一 受託者である個人の死亡
二 受託者である個人が後見開始又は保佐開始の審判を受けたこと。
三 受託者(破産手続開始の決定により解散するものを除く。)が破産手続開始の決定を受けたこと
四 受託者である法人が合併以外の理由により解散したこと
五 次条の規定による受託者の辞任
六 第五十八条の規定による受託者の解任
七 信託行為において定めた事由
2 受託者である法人が合併をした場合における合併後存続する法人又は合併により設立する法人は、受託者の任務を引き継ぐものとなります。受託者である法人が分割をした場合における分割により受託者としての権利義務を承継する法人も、同様です。
3 前項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによります。
4 第一項第三号に掲げる事由が生じた場合において、同項ただし書の定めにより受託者の任務が終了しないときは、受託者の職務は、破産者が行います。
5 受託者の任務は、受託者が再生手続開始の決定を受けたことによっては、終了しません。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによります。
6 前項本文に規定する場合において、管財人があるときは、受託者の職務の遂行並びに信託財産に属する財産の管理及び処分をする権利は、管財人に専属します。保全管理人があるときも、同様です。
7 前二項の規定は、受託者が更生手続開始の決定を受けた場合について準用する。この場合において、前項中「管財人があるとき」とあるのは、「管財人があるとき(会社更生法第七十四条第二項 (金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第四十七条 及び第二百十三条 において準用する場合を含む。)の期間を除く。)」と読み替えるものとする。
受託者は、委託者及び受益者の同意を得て、辞任することができます。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによります。
2 受託者は、やむを得ない事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができます。
3 受託者は、前項の許可の申立てをする場合には、その原因となる事実を疎明しなければなりません。
4 第二項の許可の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければなりません。
5 第二項の規定による辞任の許可の裁判に対しては、不服を申し立てることができません。
6 委託者が現に存しない場合には、第一項本文の規定は、適用しません。
委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、受託者を解任することができます。
2 委託者及び受益者が受託者に不利な時期に受託者を解任したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければなりません。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りではありません。
3 前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによります。
4 受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、委託者又は受益者の申立てにより、受託者を解任することができます。
5 裁判所は、前項の規定により受託者を解任する場合には、受託者の陳述を聴かなければなりません。
6 第四項の申立てについての裁判には、理由を付さなければなりません。
7 第四項の規定による解任の裁判に対しては、委託者、受託者又は受益者に限り、即時抗告をすることができます。
8 委託者が現に存しない場合には、第一項及び第二項の規定は、適用しません。
信託行為の定めにより受益者となるべき者として指定された者(受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定された者を含みます。)は、当然に受益権を取得します。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによります。
受託者は、受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得したことを知らないときは、その者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければなりません。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによります。
受益者を指定し、又はこれを変更する権利を有する者の定めのある信託においては、受益者指定権等は、受託者に対する意思表示によって行使しますが、受益者指定権等は、遺言によって行使することもできます。
遺言によって受益者指定権等が行使された場合において、受託者がこれを知らないときは、これにより受益者となったことをもって当該受託者に対抗することができません。
受託者は、受益者を変更する権利が行使されたことにより受益者であった者がその受益権を失ったときは、その者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければなりません。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによります。
受益者指定権等は、相続によって承継されません。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによります。
受益者指定権等を有する者が受託者である場合には、その権利行使は、「受益者となるべき者」に対する意志表示によって行います。
次の信託においては、委託者は、受益者を変更する権利を有します。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによります。
一 委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託
二 委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託
これらの受益者は、委託者が死亡するまでは、受益者としての権利を有しません。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによります。
受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有します。
]]>受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができます。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りではありませんが、信託行為に別段の定めがあるときは、適用しません。ただし、その定めは、善意の第三者に対抗することができません。
受益権の譲渡は、譲渡人が受託者に通知をし、又は受託者が承諾をしなければ、受託者その他の第三者に対抗することができません。この通知及び承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、受託者以外の第三者に対抗することができません。
受託者は、受益権譲渡の通知又は承諾がされるまでに譲渡人に対し生じた事由をもって譲受人に対抗することができます。
受益者は、その有する受益権に質権を設定することができますが、その性質がこれを許さないときは、この限りではありません。また、信託行為に別段の定めがあるときは、受益権に質権設定することはできませんが、その定めは、善意の第三者に対抗することができません。
]]>受益者は、受託者に対し、受益権を放棄する旨の意思表示をすることができますが、受益者が信託行為の当事者である場合は、この限りではありません。また、受益者は、受益権を放棄する意思表示をしたときは、当初から受益権を有していなかったものとみなされますが、第三者の権利を害することはできません。
]]>委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害すべき事実を知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、詐害信託による取消しを裁判所に請求することができます。
ただし、受益者が現に存する場合において、その受益者の全部又は一部が、受益者としての指定(信託行為の定めにより又は第八十九条第一項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定されることをいう。以下同じ。)を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りではありません。
2 前項の規定による請求を認容する判決が確定した場合において、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者(委託者であるものを除く。)が当該債権を取得した時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、委託者は、当該債権を有する債権者に対し、当該信託財産責任負担債務について弁済の責任を負う。ただし、同項の規定による取消しにより受託者から委託者に移転する財産の価額を限度とします。
3 前項の規定の適用については、第四十九条第一項(第五十三条第二項及び第五十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定により受託者が有する権利は、金銭債権とみなされます。
4 委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合において、受益者が受託者から信託財産に属する財産の給付を受けたときは、債権者は、受益者を被告として、民法第四百二十四条第一項 の規定による取消しを裁判所に請求することができます。ただし、当該受益者が、受益者としての指定を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでありません。
5 委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、債権者は、受益者を被告として、その受益権を委託者に譲り渡すことを訴えをもって請求することができます。この場合においては、前項ただし書の規定を準用されます。
6 民法第四百二十六条 の規定は、前項の規定による請求権について準用されます。
7 受益者の指定又は受益権の譲渡に当たっては、第一項本文、第四項本文又は第五項前段の規定の適用を不当に免れる目的で、債権者を害すべき事実を知らない者(以下この項において「善意者」という。)を無償(無償と同視すべき有償を含む。以下この項において同じ。)で受益者として指定し、又は善意者に対し無償で受益権を譲り渡してはなりません。
8 前項の規定に違反する受益者の指定又は受益権の譲渡により受益者となった者については、第一項ただし書及び第四項ただし書(第五項後段において準用する場合を含む。)の規定は、適用しません。
]]>登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産については、信託の登記又は登録をしなければ、当該財産が信託財産に属することを第三者に対抗することができません。
つまり、不動産を信託する場合は、単に信託契約書等を作成するだけでは足らず、信託の登記までしないと、その不動産が信託財産に属することを第三者に対抗することができなということになります。
ただし、あくまで「対抗できない」だけであって、信託の効力としては発生していることになります。
]]> 信託は、次に掲げる場合に終了します。
一 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。
二 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき。
三 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき。
四 信託の併合がされたとき。
五 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。
六 信託行為において定めた事由が生じたとき。
また、委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができます。
委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければなりませんが、やむを得ない事由があったときは、この限りではありませんし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによります。